映画『聖なるいちじくの種』ネタバレあらすじ・感想|もし自分がこの国に生まれていたら

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⏱️読了目安|約3分


2025年2月に日本公開されたイラン映画『聖なるいちじくの種』。

カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、第97回アカデミー賞の国際長編映画賞にもノミネートされた作品です。

この映画を観終えたとき、「恐ろしい国の話」で終わらせられませんでした。
登場人物のだれか一人に自分を重ねたとき、「自分ならどうしていたか」という問いが頭から離れなくなる。そういう作品です。



作品情報

  • 作品名:聖なるイチジクの種
  • 製作年:2024年
  • 上映時間:167分
  • 監督:モハマド・ラスロフ
  • 日本公開:2025年2月14日
  • 受賞:第77回カンヌ国際

あらすじ

舞台は2022年のイラン。

ひとりの女性の不審死をきっかけに、全国規模の抗議運動が起きていました。政府はデモ参加者を武力で弾圧しています。

主人公のイマンは、20年間まじめに働いた末にようやく予審判事に昇進します。

でも実態は、反政府デモで逮捕された人たちに、証拠を確認することなく上から示された判決をそのまま承認するだけの仕事でした。前任者はそれを断って解雇されています。

報復を恐れる立場のため、家族にも職務の内容を話してはいけない。身を守るために国から銃が支給されます。

イマンは葛藤しながらも、家族を養うためにその役割を続けます。

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※ここからネタバレあり※

【起】銃が消えた

ある日、家の中からその銃がなくなります。

紛失が発覚すれば解雇どころか投獄される可能性がある。最初は自分のミスかと思っていたイマンは、次第に妻・長女レズワン・次女サナへ疑いの目を向け始めます。

娘たちはSNSで外の世界の真実を知っていました。デモで何が起きているか、父の仕事が何を意味するか——感じ取っていた。家族の間にあった信頼が、一丁の銃を軸にじわじわと崩れていきます。

【承・転】家庭の中で起きること

疑いはやがて確信へ変わり、イマンの行動は家族への監視・拘束・脅迫へとエスカレートしていきます。

国家の論理を内面化した男が、今度は家庭の中で「支配者」として振る舞い始める。サスペンスとして始まった物語が、ここで性質を変えます。

妻のナジメは夫を支えながらも、娘たちを守ろうとする。レズワンとサナは抵抗を続ける。それぞれが、それぞれの立場で選択を迫られます。

【結】どこにも逃げ場はない

終盤、物語は一気に加速します。イマンは最終的に自分の家族を「敵」として扱うことを選びます。

結末は希望と絶望が入り混じる形で幕を閉じ、イランという国家の縮図が、4人家族の中に凝縮されていました。


「他人事」で終わらない理由

映画を観ながら考えました。

もしわたしがイマンだったら?
家族を守りたい、生活を失いたくない。そのためにシステムに加担することを、最初は「仕方ない」と思うかもしれない。

もしわたしがレズワンやサナだったら?
SNSで真実を知りながら、父親が加害側にいると気づいたとき、どう向き合うか。

もしわたしがナジメだったら?
夫を愛しながら、娘たちも守りたい。その間で引き裂かれる場所に、立てるか。

どの立場も「理解できてしまう」ところが、この映画の一番怖いところだと思います。

善悪の単純な話ではなく、社会の構造に絡め取られた人間の複雑さが描かれています。

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監督はなぜ亡命したのか

監督のモハマド・ラスロフは、過去にも自作でイラン政府を批判したとして複数回逮捕・投獄されてきた人物です。

本作は2023年末から2024年春にかけて秘密裏に撮影されました。監督自身が現場に立てないシーンも多く、オンラインでスタッフに指示を出しながら制作を進めたといいます。

撮影終了後、新たな実刑判決(懲役8年・鞭打ち・財産没収)が確定すると同時に、ラスロフは2時間で出国を決断。徒歩でイラン国境を越え、28日かけてカンヌにたどり着きました。

撮影した映像はイランからドイツのハンブルクへ密かに持ち出されて編集され、完成版には実際の抗議デモや警察による暴行を捉えた映像も加えられています。

映画を作ること自体が、命がけの行為だったということです。そのことを知った上でスクリーンを見ると、映像の重みがまた変わります。

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まとめ

『聖なるいちじくの種』は、「イランの話」として距離を置いて見られる映画ではありませんでした。

国家・家族・自分のアイデンティティという問いを、サスペンスの形で突きつけてくる作品です。167分という長さを感じさせない密度があります。

「自分ならどう立ち回るか」——観た後もしばらくそれを考え続けてしまう映画は、そう多くないと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今後も映画やドラマ、アニメのおすすめ作品を紹介していきますので、ぜひまた遊びに来てください。


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