映画『Michael』レビュー|批評家39%・観客97%の評価差はなぜ生まれたのか

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『Michael/マイケル』は、マイケル・ジャクソンの幼少期から1988年の「Bad World Tour」までを描いた伝記映画です。父親の支配という逆境を乗り越え、世界的スターへと成長していく前半生にフォーカスした作品になっています。

なお、伝記映画の性質上、この記事には作品内容のネタバレが含まれます。


引き込まれたけど、物足りなかった

制作陣は『ボヘミアン・ラプソディ』を手がけたグレアム・キングをはじめ、伝記映画を知り尽くしたメンバーが揃っています。

観ている間はあっという間に時間が過ぎるほど、没頭して楽しめました。

ただ、正直に言うと、映画終盤にかけて「もう終わり?早くない?」と感じ少し物足りなさを覚えたのも本音です。

私と同じように、「もっとマイケルの人生を観たかった」と感じた人も多いのではないでしょうか。

では、なぜこの映画は前半生に焦点を絞って描かれたのでしょう。


なぜ1988年で終わるのか

実は本作は、当初マイケルの生涯全体を描く予定だったとされています。

ところが撮影終了後、1993年の和解文書をめぐる問題が浮上します。その文書には、ジョーダン・チャンドラーを映画で描写・言及しない趣旨の条項が含まれていたとされています。

※ジョーダン・チャンドラー:1993年にマイケルを告発した人物。翌年、民事訴訟は和解で決着。


その結果、終盤部分の再構成が必要になりました。再撮影は2025年6月に22日間行われ、追加費用は1000万〜1500万ドルに上ったとも伝えられています。

監督の アントワーン・フークア は、「マイケルという人間を理解するには原点から旅をする必要がある」「彼は家族への愛と音楽への愛の間で葛藤し続けていた」という趣旨の発言をしています。

前半生に焦点をあてることは、現実的な事情だけでなく、監督自身の意図でもあったようです。

なお、映画のエンドカードには「His story continues」という一文が添えられています。続編については現時点で正式な発表はありませんが、制作サイドも前向きなコメントを残しています。


※この映画の見どころや裏話をまとめた記事もあわせてどうぞ。
映画『Michael/マイケル』の見どころ・裏話を徹底解説!


批評家39%・観客97%、なぜここまで差がついたのか

映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」での評価です。

批評家スコア:39%
観客スコア:97%

SNSでも「批評家は厳しすぎる」「ファンが盛り上げているだけでは」という声が飛び交っていました。ただ、この評価差には好みの違い以外にも理由があります。

批評家が問題視したのは、マイケルの人生を描く作品でありながら、後年の重要な時期が描かれていないという点です。

一方、観客が見ていたのは別のところでした。音楽、ライブシーン、ダンス、そしてジャファー・ジャクソンの演技。

批評家は「伝記映画」として評価し、観客は「音楽映画」として楽しんだ。その差が、そのまま数字に出たのだと思います。

観て感じたこと

個人的に印象に残ったのは、スターになってからのマイケルです。

世界的な成功を収め、富も名声も手にしてなお、実家で暮らし、動物たちと親友のように接しながら過ごす。母親との静かな時間、兄弟たちとの何気ない会話、病気の子どもたちへのお見舞い——そういった場面が、丁寧に描かれています。

純粋で、優しくて——そう感じさせる場面が続きます。

ただ、その一方で、観ているうちに、じわじわと違和感も生まれてきました。

家族や動物、音楽関係者以外の人物との関わりが、ほとんど描かれないのです。同年代の友人も、ごく普通の他者との交流も出てこない。

マイケルの世界が意図的に限定されているような印象を受けます。

これは和解条項による制約なのか、それともマイケル自身の人物像なのか、観ていても判断はつきません。

結局この映画を観終えても、「本当のマイケルをつかみきれない」という感覚が残ります。

聖人のような人物として描かれている。でもそれが全部なのかどうか、わからない。
その「わからなさ」は、もしかしたら彼自身が望んだものなのかもしれません。

また、天性の才能だけでなく、並外れた努力があったことも伝わってきます。華やかなステージの裏側に、積み重ねてきた時間の重さがある。そのことを、本作は丁寧に描いています。


音楽映画のような体験だった

作品名「THIS IS IT」



映画全体としては、十分に満足できる作品でした。

個人的には、伝記映画というより、音楽を中心に据えた作品という印象です。

鑑賞中はずっと音楽に引き込まれ、帰宅後にはサウンドトラックをすぐに再生。

そのまま、2009年6月に急逝したことで実現しなかったロンドン公演のリハーサルを記録したドキュメンタリー『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』も、あらためて見返しました。

映画館を出た後、同じ行動をとった人は多いのではないでしょうか。


最後までお読みいただきありがとうございました。

構成についての賛否は、きっとこれからも続くでしょう。それでも観終わった後に残ったのは、あの曲も、あのステージも、「もっと聴きたい」「もっと知りたい」という気持ちでした。それで十分だと思っています。

改めて実感したのは、マイケル・ジャクソンはやはり特別だということです。
スクリーン越しでも魅了される「何か」がある。

続編が実現するなら、それ以上のことはありません。



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